マスクと少しだけコアビタシオン(保革共存)
- Naoko Okuda
- 2020年4月27日
- 読了時間: 4分
本日、4月27日月曜日より、フランスの薬局ではマスクの販売(上限価格5ユーロ)が再開されます。
これで、5月11日に予定されている外出禁止令解除に向けての3条件、マスク・テスト・アプリ、のマスクはクリアできた事になります。※推奨規格 フィルター指数70%以上
3月7日の省令で、政府がマスクの市場流通に強制介入し、非医療者への販売をできなくしていました。目的は医療者用マスクを確保する事にあったのですが、今振り返ると、このように市場に強制介入すると卸や販売業者の反発を買い、かえって良くなかった事がわかります。
中国からの輸入にその殆どを頼っていたマスクは、代金を支払ったはずの商品が上手く届かず、すぐに在庫も尽き市場から姿を消します。
COVID19指定病院では、決して十分とは言えないながらもギリギリなんとか入手できていたようですが、問題は、市中の開業医の先生、介護施設、在宅医療・介護ワーカーには、寄付頼みの細々とした兵糧状態。
たちまち、開業医療従事者、介護従事者から感染者が続出、直接的・間接的な死亡者(医師・看護師)が報告されます。
警察官、スーパーの店員の死亡も報道され、医療・介護者を含め全ての最低義務労働者へのマスク配布要求の声が高まります。
この時点では、政府は一貫してマスクの予防効果を否定し、「一般での着用の必要性は皆無」と言い切る大統領・首相・保健大臣・DGS(医政局)局長の姿が、以降TVで何度もプレイ・バックされています。
ところが、4月1日、エイプリル・フールかと思うような突然の方向転換、マクロン大統領はマスクの重要性を宣言し、軍需用工場に命令して国内生産を始めます。
同じくして、国民もご奉仕に駆り出されミシンを踏み始めます。(この国を挙げての医療用・一般用のマスク製造の映像と、前述のプレイ・バック画面がSNSで面白おかしくアレンジされて流れていました。)
これを機に、マスク・医療用防護服・医薬品・その他ありとあらゆる原材料と、いかにフランスの製造業が中国に依存しているかを目の当たりにしたマクロン大統領は「国家主権回復」を声高に叫び始めます。
更に「マスク必要」は、医学界権威アカデミー・ド・メディシンのお墨付きを得て、「マスク着用義務」のポジションとなり、外出禁止令解除の条件の一つに昇格します。
4月26日の政府発表の数字では、死亡者は二万二千人を超えヨーロッパでは、イタリア・スペインにつぎ不名誉の第3位となったフランス。誰か責任者を名指したい気分になるのでしょうか、大統領と首相の不協和音が伝え聞こえてくるようになりました。
エドワール・フィリップ首相(49歳)は、共和党の出身、現役ル・アーブル市長を兼任しています。連立のシンボルとして首相の席に就いた外様の彼ですが、大きな衝突もなくそつなくこなしていました。
一般に、フランスでは、「首相に就いた後に大統領の席を狙わない者はいない」と言われています。
忠実な僕の如くシラク大統領に仕えていたエドワール・バラデゥール首相にせよ、サルコジー大統領に仕えていたフランソワ・フィヨン首相にせよ、反旗を翻し大統領選に立候補してむごい返り討ちにあっています。
古くは、ミッテラン大統領の時代にジャック・シラクが首相となり初のコアビタシオン(保革共存)が誕生、そのシラクが大統領になった時にもリオネル・ジョスパンが首相となり同様ねじれの状況がありましたが、やはり両者とも大統領選に立候補しています。上述いずれの4人とも大統領にはなれていません。(シラク大統領当選は元首相のポストからの出馬ではありません。)
今回はそこまではっきりとしたコアビタシオンではありませんが、このフィリップ首相は、医学界を始め多くの反対を押し切って3月15日の市長選挙投票を強行しました。
今回の地方選では、現役が有利と見ての判断だったようですが、この前後のオーバー・シュートを考えると、これは決して褒められる決定ではなく、噂によるとマクロン大統領がお冠だとか。
4月24日、パスツール研究所の発表によりますと、R0=0,5と計算され、この数字を朗報と受け取れる一方で、同時に国内の罹患率が10%未満で、集団免疫獲得にはほど遠い事がわかりました。
政府同様、フランス人は、否応なしにウィルスとの「コアビタシオン=共存」も暫くは続けなくてはなりません。
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